2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20540348
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
瓜生 誠司 岩手大学, 工学部, 准教授 (80342757)
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Keywords | 光物性 / 物性理論 |
Research Abstract |
平成22年度は3つの課題に取り組んだ.まず,カーボンナノチューブに,電場の向きがチューブ軸に垂直な偏光を照射した時の,光吸収における誘電体環境の効果を調べた.ナノチューブ表面は外界に接しているため,その特性は周辺環境によって影響される.誘電体がチューブの外側にある場合,光によって生じる電子-正孔対の束縛状態効果はほぼ消失するのに対し,誘電体がチューブ内にある場合は,束縛状態効果が顕著であることが分かった.これは,外側に誘電体がある場合にはクーロン力が効果的に弱められるが,内側にある場合はあまり弱められないことによる.この結果は,従来の理論では定性的にしか理解できなかった実験を定量的に説明する可能性がある. また,ナノチューブにおける反電場効果の理論計算法について調べた.ナノチューブに垂直偏光を照射すると,電子と正孔がチューブ断面の反対側へ分離し,両者の間に電場が生じて外場が弱まるために,光吸収は抑制される.この反電場効果を電子-正孔間のある種の相互作用(交換相互作用)として扱う近似は,ナノチューブの場合にはうまく働かないことを示した.反電場効果をよく記述する方法の一つは,電子の量子力学と光の古典電磁気学の辻褄を合わせて解くことである. さらに,金属構造に局在した表面プラズモン共鳴光とナノチューブの相互作用について,数値計算法開発を行ってきた.これまで数十から数百ナノメートルの金属構造と,1ナノメートル直系のナノチューブを1つの系として扱うことが難しい問題であった.今年度これを克服し,現実的な系におけるナノチューブの光応答特性の計算が可能となった. ナノチューブ・フラーレン
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