2009 Fiscal Year Annual Research Report
テラヘルツ波を用いた電荷異動錯体における超高速強誘電相制御
Project/Area Number |
20540349
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
沖本 洋一 Tokyo Institute of Technology, 大学院・理工学研究科, 准教授 (50356705)
|
Keywords | テラヘルツ / 電荷移動錯体 / フェムト秒レーザ / 強誘電体 / 非線形光学 |
Research Abstract |
様々な有機分子から構成される有機電荷移動錯体(CT錯体)は、磁性、誘電性、伝導性などにおいて多くの興味深い現象を示すことで注目されており、現在の固体物理学研究の中心的ともいえる物質群を形成している。本研究では、数あるCT錯体の中からとくに、「強誘電相転移(中性-イオン性転移)」を示す物質TTF-CA結晶に注目し、テラヘルツ(THz)領域(遠赤外領域)のフェムト秒レーザシステムを構築し、試料の強誘電性の高速光制御を行うことを目的としている。平成21年度は、初年度に構築にスタートしたTHz分光システムをほぼ完成させ、フェムト秒領域の時間分解透過スペクトルの測定が可能となった。それとともに、対象試料であるTTF-CAの薄膜結晶の合成にも取り組んだ。合成された試料は、中赤外透過スペクトルや第二高調波の測定などから、良質の単結晶試料が得られていることを確認することができた。得られた薄膜結晶を用いて、THz領域(50cm^<-1>-80cm^<-1>)の透過スペクトルの測定を行った。その結果、中性-イオン性転移にともなうフォノン振動モードの周波数シフトが明瞭に観測された。このフォノンモードは、通常の分子振動に由来するものではなく、THz領域にみられる分子の剛体振動モード(ライブロンモード)であり、この周波数変化を捉えることに初めて成功した。今後は、この振動モードの詳細な温度依存性、および具体的な振動パターンの解析を進めていくと同時に、本研究の目的であるTHz領域の光誘起フォノンダイナミクスを詳細に調査していく予定である。
|