2008 Fiscal Year Annual Research Report
超低温強磁場環境下における1次元スピン磁性体の量子臨界現象の研究
Project/Area Number |
20540352
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
辻井 宏之 Kanazawa University, 数物科学系, 研究支援者 (10392036)
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Keywords | 磁性 / 物性実験 / 低温物性 / 量子スピン系 / 量子臨界現象 |
Research Abstract |
本研究では、1次元量子スピン鎖の比熱測定を、約1 mKの超低温または45 Tにまで到達する強磁場まで拡張することにより、量子1次元系の臨界現象を解明することを目的としている。今年度は、超低温比熱計で使用する微小温度計の開発と、強磁場における複合ハルデン鎖の比熱測定を行った。比熱測定で最も重要である温度測定を超低温領域で精密に行うため、グラスの誘電率の温度変化を利用し発熱や磁場依存性の少ないキャパシタンス温度計を開発している。1 mK領域の温度計として、緩和法比熱測定に適した材料の選定がほぼ終了し、自作したキャパシタンスブリッジおよび小型冷凍機を用いて、性能評価のための冷却テストを行える状態にある。今後、サンプルへのヒートリンクの材料などを選定し設計を終えた、比熱計本体の製作に取り掛かる。S=1/2を担うCuイオンが梯子鎖を形成しているIPA-CuCl_3では、反強磁性的なleg方向の相互作用に対して、rung方向の強磁性相互作用が強く、これにより結合した2つのS=1/2スピンがS=1として振舞い、整数スピンの1次元反強磁性体と同等の基底状態を持つ複合ハルデン鎖が形成されている。IPA-CuCl_3の比熱及び磁気熱量効果の測定を、18 Tの高磁場および0.1Kの低温まで行い磁気相図をもとめた。その結果、磁場誘起反強磁性秩序への転移磁場は、マグノンのボース・アインシュタイン凝縮を示すべき乗の温度依存性を示し、その係数は磁場方向に依存することが分かった。また、臨界磁場近傍で比熱の温度に対する線形の振舞いが観測された。今後、1次元系における量子臨界現象に関する知見を得るため、さらに低温での振舞いを解明したい。
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Research Products
(4 results)