2008 Fiscal Year Annual Research Report
コバルト酸化物の超伝導相を分断する非超伝導相の起源
Project/Area Number |
20540354
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
小林 義明 Nagoya University, 大学院・理学研究科, 准教授 (60262846)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 正俊 名古屋大学, 大学院・理学研究科, 教授 (40092225)
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Keywords | コバルト酸化物 / NMR / ナイトシフト / 比熱 / 中性子散乱 / 超伝導 / 核四重極共鳴 / 反強磁性ゆらぎ |
Research Abstract |
これまで様々な試料の超伝導転移温度T_c(最大4.6K)とCo核四重極共鳴周波数v_Qを調べ、T_c-v_Q相図をまとめた。相図の特徴は中間のv_Q領域にある非超伝導相により、v_Qの大きい領域と小さい領域に超伝導相が分断されていることである。ここではまず、各相へ転移する温度より上の電子状態の相違点を明らかにするため、様々な試料に対して比熱の測定を行った。得られた低温電子比熱は広いv_Q領域で、ほとんどv_Q値に依らないという結果を得た。これは、これまで言われていた、2つの超伝導相でフェルミ面が異なり、低v_Q領域と高v_Q領域で超伝導電子対の対称性が異なるという考えを否定している。また、超伝導状態のCo-NMRナイトシフトの温度変化から得られた、2つの超伝導相はともにスピンシングレット状態であるということを支持する結果となっており、2つの超伝導相ではその電子対は同じ対称性をもつと考えられる。さらに低v_Q領域の超伝導相に位置する試料に対して中性子非弾性散乱実験を行った。そこで強磁性ゆらぎと反強磁性ゆらぎに対応する2つの磁気散乱ピークを観測した。強磁性ゆらぎの方は温度の減少とともに減少し、25K以下は見えなくなる。一方、反強磁性ゆらぎは測定最低温5Kまで存在することがわかった。このことはこの系のバンド計算から考えられていたe_g'バンドの小さいホールのフェルミ面はないことを示し、これまで言われていた、この系でのスピントリプレット状態の超伝導電子対の可能性を完全に排除する結果となる。比熱の結果と合わせると、a_<1g>バンド由来のフェルミ面のみがこの系の電子状態を決めていると考えられる。
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Research Products
(15 results)