2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20540356
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
村岡 祐治 Okayama University, 大学院・自然科学研究科, 准教授 (10323635)
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Keywords | 光電子分光 / 超伝導 / 遷移金属酸化物 |
Research Abstract |
平成20年度は光キャリア注入の研究にあたり、その対象物質であるVO2の電子状態に関する研究を行った。VO2は金属絶縁体転移を示す物質である。その転移については関連研究が多くなされているが、起源については未だ議論がなされている。今年度は、TiO2(001)単結晶基板上にVO2エピタキシャル薄膜を作製し、これを用いて転移のメカニズムに重要な情報が得られる角度分解光電子分光測定に成功した。この測定により世界で初めてこの物質のバンド構造を明らかにした。 実験ではまず、高品質なVO2エピタキシャル成長膜をTiO2(001)基板上に作製するための最適基板温度を決定した。 次に、膜厚を変化させたVO2薄膜を作製し、その光電子分光測定によりVO2薄膜とTiO2基板の界面では化学反応により(V1-xTix)O2が生成していることを明らかにした。この際、Ti固溶のないVO2膜は10nm以上の厚さを持つ膜の表面付近に生成していることを示した。これらの結果より、Ti固溶のないVO2膜の電子状態を調べるためには、厚さが10nm以上の薄膜を用いて表面敏感な光のエネルギーによる光電子分光測定を行うことが望ましいと提唱した。この考えに基づき13nmの厚さのVO2薄膜を用いて真空紫外領域の光エネルギーにより角度分解光電子分光測定を行い、金属相のバンド分散を世界で初めて観測することに成功した。得られたバンド構造から転移に関与している電子の物理パラメータを導出することにも成功した。この研究はVO2の角度分解光電子分光実験の先駆的なものであり、本研究により金属絶縁体転移のメカニズムの研究が大きく進展すると期待される。
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