2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20540356
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
村岡 祐治 Okayama University, 大学院・自然科学研究科, 准教授 (10323635)
|
Keywords | 薄膜 / 遷移金属酸化物 / 光電子分光 |
Research Abstract |
平成21年度はSnO2薄膜における光照射効果に関する研究を行った。その結果、SnO2薄膜では光照射により大きな伝導度の向上が観測されることや、その原因がキャリアの移動度の増大にあることを明らかにした。この現象には薄膜内からの(吸着)酸素の脱離とそれに伴う粒間障壁エネルギーの減少が重要な役割を果たしていることをメカニズムとして提案した。光によるキャリア移動度の大幅な制御は異例であり、メカニズムの解明や光照射効果の高効率化により、金属酸化物特性の光制御、さらには光デバイス作製の研究に新たな展開が生じるものと期待される。 一方、SnO2と同じルチル型結晶構造を有するVO2について電子状態に関する研究を行った。VO2は金属絶緑体転移を示す物質である。その転移については関連研究が多くなされているが、起源については未だ議論がなされている。本研究ではTiO2(001)単結晶基板上にVO2エピタキシャル薄膜を作製し、これを用いて角度分解光電子分光測定を行った。その結果、金属相のバンド分散を世界で初めて観測することに成功した。得られたバンド構造から転移に関与している電子の物理パラメータを導出することにも成功した。この研究はVO2の角度分解光電子分光実験の先駆的なものであり、本研究により金属絶緑体転移のメカニズムの研究が大きく進展すると期待される。 光応答する物質探索の途中で、ホランダイト型チタン酸化物における室温強磁性的な振る舞いを見出した。電子状態の研究より、ホランダイト型では局在Ti3+と酸素欠損が強磁性の発現に関与していることを明らかにした。本研究結果は特性劣化の原因になるとしてこれまで避けられていた欠陥導入がホランダイト型チタン酸化物のような酸化物半導体では室温強磁性という機能を創出する有効な手法となることを示した。本研究は、これまで手つかずであった欠陥を用いた機能の創出や欠陥誘起現象の物理といった研究分野に光をあてるものになったと思われる。
|
Research Products
(12 results)