2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20540359
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
青木 勇二 首都大学東京, 理工学研究科, 准教授 (20231772)
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Keywords | 強相関電子系 / 多極子 / スクッテルダイト / 核比熱 / 超微細相互作用 / 超微細結合多重項 |
Research Abstract |
立方晶系RT_4X_<12>型充填スクッテルダイト(立方対称カゴ構造の中心に希土類イオンが位置する高い対称性のため、多極子自由度が低温まで残り、高次の多極子秩序が低温で発現しやすい)の幾つかの化合物の極低温比熱測定を進めながら、超微細相互作用による核スピンが関与した4f電子の新規物性を探索した。今年度の主要な発見は、以下に述べるように、PrRu_4P_<12>における極低温異常の発現機構を超微細相互作用を考慮することにより解明できたことである。 PrRu_4P_<12>の63K以下で現れる特異な電荷秩序相内では、一つのPrサイトが低温で3重項基底状態を持つことがわかっている。この3重に縮退した基底状態が、何らかの非磁性的なメカニズムにより、約1K程度のエネルギー差を持って分裂していることを我々がこれまでに観測していたが、その機構は不明であった。この異常な比熱の振る舞いが、Pr核の核スピン(1=5/2}とPr 3重項状態が、超微細相互作用により結合することにより形成された新奇な多重項状態(以下、超微細結合多重項と呼ぶ)により、物性研の榊原グループで測定された磁化データを含めて、うまく説明されることを明らかにした。これは、結晶固体中における超微細結合多重項の、熱力学的物理量測定による初めての観測である。この多重項が結晶固体中で伝導電子と相互作用した際、従来のものとは異なる新しいタイプの強相関電子状態を形成することが期待できる。この検証を目指した、電子輸送効果を含めた系統的研究を今後本系で行っていく予定である。
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