2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20540372
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
永尾 太郎 Nagoya University, 大学院・多元数理科学研究科, 准教授 (10263196)
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Keywords | ランダム行列 / 半古典量子論 |
Research Abstract |
実非対称行列のランダム行列アンサンブルについては,実固有値と複素固有値が共存する複雑な構造のため,固有値相関の扱いが困難であった.ところが,最近になって,古くから知られている直交多項式の方法が適用可能であることが研究代表者らによって発見され,急速に研究が進展している.平成20年度の研究においては,実非対称行列の非対称性の大きさをパラメータとするランダム行列アンサンブルについて,直交多項式の方法による解析を進めた.その結果,実非対称行列のアンサンブル(実Ginibreアンサンブル)と実対称行列のアンサンブル(Gauss型直交アンサンブル)の間を結ぶ固有値相関関数の表式を得た.また,行列のサイズが大きい極限における固有値相関関数の漸近的な振る舞いを導くことにも成功した. 一方,量子カオス系に対して半古典的なダイアグラム展開の方法を適用して,ランダム行列理論によって予言される普遍的な性質を再現する研究も進めている.最近,解析数論におけるRiemann-Siegel公式に対応する公式を用いれば,これまで困難であったエネルギー準位相関関数の振動部分の評価ができることが知られるようになっている.本研究においては,この新しい方法を取り入れることにより,エネルギー準位相関の普遍性の理解を,さらに進展させることを試みている.また,場の理論的な方法と半古典的なダイアグラム展開の方法の対応関係を明らかにすることにより,これらの方法を,複雑ネットワークなどのより多くの対象に適用できるように整備したいと考えている.
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