2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20540372
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
永尾 太郎 名古屋大学, 大学院・多元数理科学研究科, 教授 (10263196)
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Keywords | ランダム行列 / 半古典量子論 |
Research Abstract |
量子カオス系のエネルギー準位分布のゆらぎには,ランダム行列理論により記述される普遍性があることが知られている.ランダム行列理論の予言によれば,エネルギー準位の高次相関関数は,時間反転非対称な系については行列式の構造を,時間反転対称な系についてはパフィアンの構造をもつ.前年度に発表した研究では,時間反転非対称な系において,行列式の構造を半古典的に導出できた.そこで,本年度の研究においては,時間反転対称な系の高次相関関数を半古典的に評価することを試みた.また,時間反転対称な系において電子スピンの効果により普遍性クラスの間の遷移が生じる場合について,遷移領域における電気伝導を半古典的に記述した結果をランダム行列理論の予言と比較する研究を発表した.さらに,磁場の作用により時間反転対称性が破れる場合について,普遍性クラスの遷移領域におけるエネルギー準位相関が量子系の時間発展にどのように反映されるかを考察した. ランダム行列理論の方法は,インターネットや人間関係などのつながり方を記述すると考えられている複雑ネットワークの理論にも適用できる.本年度の研究においては,複雑ネットワークの隣接行列およびラプラシアン行列について,平均次数(1つの頂点から出る辺の数の平均)が大きい極限では固有値分布を解析的に評価できる理由が解明された.また,固有値分布のゆらぎについて,量子カオス系のエネルギー準位分布のゆらぎと同様の普遍的な性質があることが知られているので,その理由の解明に向けて研究を進めている.
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