2008 Fiscal Year Annual Research Report
超統計に対する熱力学形式の定式化と複雑系におけるスケーリング則の系統的導出
Project/Area Number |
20540374
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
阿部 純義 Mie University, 大学院・工学研究科, 教授 (70184215)
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Keywords | 超統計 / ハイパーアンサンブル / 条件付き熱統計力学 / 最大エントロピー原理 |
Research Abstract |
平成21年度前半は、超統計の熱力学形式の定式化に向けた「熱統計力学における条件付き概念」の基礎研究を行った。これによって局所平衡状態への速い緩和(短い時間スケール)と、局所温度などの示強変数のゆっくりした揺らぎ(長い時間スケール)の分離を効果的に表現することが出来ることを見出した。更に年度の後半にかけては、上記の定式化が、いわゆるハイパーアンサンブルの概念に整合することを示し、超統計へのアンサンブル理論によるアプローチを研究した。 超統計における基本的な問題のひとつは、示強変数の揺らぎをあらわす確率分布は如何にして決定されるのか、という事柄である。これに関して、最大エントロピー原理を一般化した方法を開発中である。この方法は、通常の最大エントロピー原理とは異なり、条件付きエントロピーを最大にするというものである。これによって、短い時間スケールをもつ自由度が既に消去され、長い時間スケールの揺らぎのランダム性がクエンチされる事実をあらわに表現することが可能となると期待される。前段的研究結果によれば、超統計のユニヴァーサリティ・クラスのひとつである逆カイ自乗分布がBrown粒子の描像から自然に導かれる可能性が明らかになりつつある。 なお上記研究遂行中に、揺らぎ定理に関連するふたつの結果をまとめる機会があった。ひとつは、transient型揺らぎ定理に対するOnsager-Machlup理論によるアプローチを非線形領域に拡張した際、エントロピーの繰り込みが生じるというものである。また他方は、熱交換に関するJarzynski-Wojcikkの揺らぎ定理の別証明を与えるというものであった。
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