2010 Fiscal Year Annual Research Report
超統計に対する熱力学形式の定式化と複雑系におけるスケーリング則の系統的導出
Project/Area Number |
20540374
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
阿部 純義 三重大学, 大学院・工学研究科, 教授 (70184215)
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Keywords | 超統計理論 / 対数正規分布 / 発達乱流 / ユニヴァーサリティ・クラス |
Research Abstract |
平成22年度は、超統計理論において最も本質的な問題である「示強変数の揺らぎ」を如何に導くか、という問題に取り組んだ。特に、発達乱流中の速度差分布に対する古典的な例などに対応する対数正規型の超統計について研究した。基本的なアイデアは、多くの場合エントロピーが示強変数の対数で与えられること、およびエントロピーの非平衡揺らぎに対して、最近の非平衡統計力学における重要な発見である「揺らぎ定理」を応用することである。このことから、超統計理論において中心的な役割を果たす対数正規型超統計のユニヴァーサリティ・クラスを導くことに成功した。これによって、超統計理論と揺らぎ定理との関係が初めて明らかにされた。 なお、年度中にその他の統計力学と量子力学に関する二つの研究を遂行する機会があった。ひとつは、非対数型の一般化されたエントロピーは連続確率変数への極限をもたないこと、従って、系の離散性が大前提であることを示した。この研究は直ちに注目され、この結果を批判する論文も現れたが、返答論文の中で批判をすべて論駁した。もう一つは、量子演算と量子エンタングルメントの問題である。与えられた温度ゼロでのエネルギー固有状態を任意の統計的状態に写像する完全正値量子演算を見いだすことが出来た。この演算は、unitalな正値演算子値測度をなす。この演算を、2-qubit系の量子エンタングルメント状態に作用させ、エンタングルメントが如何に消失してゆくかを論じた。
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