2009 Fiscal Year Annual Research Report
キラル自触媒化学システムにおける空間不均一性の成長が光学純度にもたらす効果の解析
Project/Area Number |
20540380
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
朝倉 浩一 Keio University, 理工学部, 教授 (30222574)
|
Keywords | キラル対称性の破れ / 散逸構造 / キラル自触媒反応 / 不斉増幅反応 / 結晶成長 / 非線形動力学モデル / 国際情報交換 / アメリカ |
Research Abstract |
Soai反応とは、ピリミジンアルデヒド誘導体とジイソプロピル亜鉛とを反応させて不斉アルコール類を合成するものであり、自発的に高光学純度の生成物が発生することが報告されている化学反応である。本研究は、この高光学純度の自発的発生がランダムに起こることが報告されていることから、化学系の空間不均一性の成長が自触媒的に進行するものと想定し、Soai反応系の挙動を包括的に予測できるモデルを構築することを目的とするものである。平成21年度は、平成20年度の研究において見いだされたSoai反応と同時に進行する副反応について、その生成物がピリミジンアルデヒド誘導体の芳香族環に直接イソプロピル基が付加したものであることを、まずは明らかにした。そして、いくつかの異なった反応条件で実験を繰り返すことにより、キラル自触媒的に進行するSoai反応とこの副反応は競争的に振る舞い、その結果として生成物が高収率および高光学純度となる場合と、低収率および低光学純度となる場合に分岐することを見いだした。このことは、Soai反応について報告されている自発的な光学純度の発生は、ランダムな現象ではなくキラル自触媒系に基づくキラル対称性の破れ転移がもたらす分岐現象であることを予想させるものである。そして、さらに化学系の撹拌状態ならびに沈殿の生成が反応挙動に対してもたらす影響についても検討を行なった。その結果、撹拌を強めることによりSoai反応よりも副反応の方が優勢となる傾向が確認された。また、Soai反応の生成物は、溶液中に溶解している分子のみがキラル自触媒的に振る舞い、沈殿相中に存在している分子は反応には関わらないことが明らかとなった。
|
Research Products
(2 results)