2008 Fiscal Year Annual Research Report
ビッグバン元素合成におけるスタウ原子衝突による触媒核融合反応
Project/Area Number |
20540385
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
木野 康志 Tohoku University, 大学院・理学研究科, 准教授 (00272005)
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Keywords | エキゾチック原子会子 / 原子衝突 / 少数多体系 / 宇宙論 / 原子核反応 / 超対称性理論 |
Research Abstract |
スタウは超対称性理論においてその存在が予言きれているタウ粒子の超対称性パートナーであり、今年秋に再開する欧州合同原子核研究機構(CERN)の大型ハドロン型加速器(LHC)においてその発見が期待されている粒子の一つである。1,000秒以上の長寿命と100GeV/c^2以上(陽子の100倍以上)の質量を持つ事が予想されている。原子・分子の視点からは、負電荷のスタウ(以降Xと略す)はクーロン相互作用により原子核と結合してエキゾチック原子分子を形成する。『ビッグバン元素合成(BBN)には多種多様の原子核反応が含まれる。従ってスタウ原子が存在した場合に起り得る原子核反応にも多種多様の反応がある。平成20年度は、スタウが6^Liおよび7^Liの生成および分解反応に関与する事を(4^HeX)_<1s>+6^H→6^Li+X(6^Li合成反応)および(7^BeX)_<1s>+1^H→(8^BX)_<2p>→(8^BX)_<1s>+γ(7^Beはβ壊変, し7^Liとなり、8^Bも最終的には2つの4Heとなるので7^Li分解反応)の反応断面積を求め、BBNにおいてスタウ触媒原子核反応は重要な役割を果たすため従来のBBN理論を見直す必要がある事を示した。これまでのBBN理論では6^Liと7^Liの1Hに対する存在比が説明できず、BBNモデルの根底に関わる最重要な問題(Li問題)の一つであった。今回の結果によりこのLi問題は解決する事ができる。スタウ原子の束縛エネルギーはBBNでの温度(衝突エネルギー)より大きいため、スタウ触媒原子核反応の計算は低エネルギーの原子衝突における組替え反応を量子力学に基づく3体問題として精密に計算する必要があった。
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