2010 Fiscal Year Annual Research Report
ビッグバン元素合成におけるスタウ原子衝突による触媒核融合反応
Project/Area Number |
20540385
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
木野 康志 東北大学, 大学院・理学研究科, 准教授 (00272005)
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Keywords | エキゾチック原子分子 / 原子衝突 / 少数多体系 / 原子核反応 / ビッグバン宇宙論 / 超対称性理論 |
Research Abstract |
スタウは超対称性理論においてその存在が予言されているタウ粒子の超対称性パートナーであり、2009年秋に実験が再開した欧州合同原子核研究機構(CERN)の大型ハドロン型加運器(LHC)において発見が期待されている粒子の一つである。原子・分子の視点からは、負電荷のスタウ(以降X^-と略す)はクーロン相互作用により原子核と結合してエキゾチック原子分子を形成する。本研究では、X^-がビッグバン直後に生成し、その後に起るビッグバン元素合成(BBN)に与えた影響を精密な原子衝突理論を基に検証した。スタウ原子衝突により生成するリチウム元素の同位体存在量を最新の観測量と比較検討し、X^-が1,000秒以上の長い寿命をもち、BBN時にバリオン数に匹敵する量が生成されていた事を明らかにした。 BBN直後、X^-が陽子と結合し中性のスタウ原子となり再び元素合成を起こす可能性を検討した。この事は、簡単な近似計算により原子核反応が推進されると予想され注目を集めていたが、本研究の精密な計算結果により否定された。 また、X^-と水素、ヘリウム同位体がつくる様々なエキゾチック原子・分子のエネルギーや分子構造を計算し、同位体効果や分子の安定性を明らかにした。また、本研究で用いた手法を反陽子、ミュオン、陽電子などを含む他のエキゾチック原子・分子の系にも応用し、ミュオニックヘリウムの超微細構造、陽電子原子の弱結合状態の構造を明らかにした。
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