2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20540392
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
柏谷 聡 独立行政法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス研究部門, 研究グループ長 (40356770)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田沼 慶忠 秋田大学, 工学資源学部・電気電子工学科, 准教授 (90360213)
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Keywords | SQUID / Sr2RuO4 / カイラルp波 / ジョセフソン接合 / スピン3重項超伝導 / マイクロデバイス / 半整数磁束量子 / 超伝導ネットワーク |
Research Abstract |
Sr2RuO4 (SRO)はカイラルp波対称性を有するペアポテンシャルを有しており、多自由度を有するトポロジカル超伝導体の一つと考えられている。この超伝導体には、コンベンショナルな磁束量子の半分の磁束量しか磁束を内包しない、半整数磁束量子の存在が許されるということは理論的には予言されているが、実験的な検証は行われていなかった。最近カンチレバーを用いた帯磁率測定において、半整数の可能性が示唆する結果が報告されたが、超伝導磁束量子干渉素子(SQUID)形状による検証の実験は行われていない。 本研究においては、SRO単体を用いた素子作成技術を確立し、SRO単体による超伝導ループ内の磁束状態をSQUIDの臨界電流の外部印加磁場の関するとして計測することにより、半整数磁束量子の形成を検証することを目指して実験を進めた。まず現在までにSRO単体を用いたジョセフソン素子の作成は報告例が無く、そのため、京都大学前野研究室から提供を受けたSRO単結晶を、研磨プロセスにより薄片化し、基板に固定後に収束イオンビーム(FIB)プロセスを用いて微細加工することにより、弱結合型のジョセフソン接合を作成した。作成されたジョセフソン接合の輸送特性は、異常なヒステリシス構造を有するスイッチング特性を示し、この起源は印加電流とカイラルドメイン構造、エッジチャンネルとの相互作用の存在を示唆しているものと解釈された。さらに弱結合を2個含む超伝導ループ構造を作成し、SQUIDとしての動作の検証を行った。SQUIDの臨界電流値はヒステリシスの無いI-V特性を示したが、外部印加電流に対して周期的な臨界電流の変調構造は観測されず、外部印加電圧に応答していないという結果になった。これは弱結合における臨界電流値が磁束の量子化条件に対応しておらず、エッジ状態やカイラルドメインの影響を含めた解釈が必要で有ることが示唆される。今後さらにSQUIDの作成および測定を進める必要がある。
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