2008 Fiscal Year Annual Research Report
マイクロビームX線回折法によるエマルション中のソフトマターの結晶化解析
Project/Area Number |
20540397
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
上野 聡 Hiroshima University, 大学院・生物圏科学研究科, 准教授 (50243605)
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Keywords | マイクロビーム / 放射光 / X線回折法 / スキャンニング / 結晶化 / エマルション / マーガリン / 油脂 |
Research Abstract |
ソフトマターとして、O/Wエマルション、ホイップオイルおよびマーガリンを選び、マイクロビームX線を用いたスキャンニング法によるX線回折測定により、以下の知見を得た。 (1)食品に広く応用されている油脂であるパーム油中融点分別油脂(PMF)を油相としたO/Wエマルションの油脂結晶化において、界面活性剤的種類により結晶化過程の異なるとが世界で初めて直接観察により確認するとができた。すなわち、高融点界面活性剤を用いた場合は、温度低下とともにこれら高融点界面活性剤が油水界面で先に結晶化し、この界面活性剤の結晶を鋳型として、PMFが油水界面に沿って結晶化し、更なる温度低下により油滴内部の結晶化が界面とは独立して生じる。これに対し、低融点の界面活性剤を用いた場合は、油水界面での結晶化は起こらず、油滴内部からの結晶化のみである。研究成果は現在、国際雑誌に投稿中。 (2)ホイップオイル、すなわち、油滴に界面浩性剤を加えた系を撹拌(ホイップ操作)し、気泡を加えることによりクリーム状にしたもの、について、クリーム状の柔らかい物性は気泡をいかに安定的に保つかに拠るが、このメカニズムには、気泡の周囲を液体油の一部が固化した微小な固体脂が取り囲み気泡をホイップオイル内に長時間保つことにより安定していることが明らかとなった。研究成果は現在、国際雑誌に投稿準備中。 (3)マーガリンについては、長期間保存により粗大結晶がマーガリン中に発生し劣化の原因となっていることが明らかとなっている。粗大結晶の発生を防ぐため、粗大結晶の正体および発生メカニズムの解明が不可欠である。調べた結果、粗大結晶は、高融点のトリパハルミチンが結晶化し、それが核となって周囲にPOPの安定多形が結晶化することにより生じていることが明らかとなっそた。研究成果は現在、国際雑誌に投稿準備中。
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