2009 Fiscal Year Annual Research Report
マイクロビームX線回折法によるエマルション中のソフトマターの結晶化解析
Project/Area Number |
20540397
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
上野 聡 Hiroshima University, 大学院・生物圈科学研究科, 准教授 (50243605)
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Keywords | マイクロビーム / 放射光 / X線回折法 / スキャンニング / 結晶化 / エマルション / ファットスプレッド / 油脂 |
Research Abstract |
ソフトマターとして、O/Wエマルション、ホイップオイル・ファットスプレッドおよびホイップ性W/Oエマルションを選び、マイクロビームX線を用いたスキャンニング法によるX線回折測定により、以下の知見を得た。 (1) O/Wエマルションの油滴内に植物ステロールを加えることを試みた結果、ある条件下では、植物ステロールの結晶が油滴中に存在していることが偏光顕微鏡観察により確認されたが、植物ステロールの結晶に関する知見は不十分である。そこでマイクロビームを油滴内の植物ステロール結晶に当てて調べてみた。その結果、油滴内の植物ステロール結晶は最安定多形の単結晶であることが明らかとなった。 (2) ホイップオイル、すなわち、油滴に界面活性剤を加えた系を攪拌(ホイップ操作)し、気泡を加えることによりクリーム状にしたもの、について、クリーム状の柔らかい物性は気泡をいかに安定的に保つかに拠るが、このメカニズムには、気泡の周囲を液体油の一部が結晶化した微小な固体脂が取り囲み気泡をホイップオイル内に長時間保つことにより安定化していることが昨年の発見に引き続き確認された。また固体脂の配向は、ラメラ面を気泡面に平行にしながら気泡の周囲を取り囲んでいることが明らかとなった。研究成果は現在、国際雑誌に投稿中。 (3) ファットスプレッドについては、昨年に引き続きファットスプレッドの粗大結晶の発生メカニズムの解明を調べた。調べた結果、粗大結晶は、昨年度明らかになった二層構造のうち外側のPOP安定多形からなる構造は、内郭層の表面に平行に結晶のラメラが配向することが明らかとなった。なお、内郭層にはこのような配向は見られなかった。この結果より、外郭層は、内郭層の周囲を取り囲むように同心円状に一層一層結晶成長する様子が示唆される。なお昨年までの研究成果は、国際雑誌に掲載された。
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