Research Abstract |
本研究では, 噴火模擬実験の実施や結果の理論的解釈, さらに噴火観測データとの比較を通して, 圧力解放過程と結果として生じる諸現象の関係を明らかにし, その火山現象解釈への利用を目的としている. 平成20年度は, 砂の下から高圧ガスを噴出し, その様子を観察する噴火模擬実験を実施したほか, 数値シミュレーションによる砂の運動及び圧力分布の計算, 過去に観測したストロンポリ火山の映像・空振同期記録の解析, 噴火に見立てた間欠泉の空振及び映像観測を行った. このうちストロンポリ火山のデータ解析では, 従来のモデルでは説明できない空振波形が得られ, それをもとに新たな解釈を行った. すなわち, ストロンボリ式噴火はマグマ表面での大きな単一気泡の破裂で生じるとされ, 発生する空振は大振幅で周波数の低い振動が1-2周期続いたあとに, 高周波数で振幅の小さい波が続くとされていた. しかし観測された噴火には多様性があり, それに対応して空振波形にも変化が見られた. このうち, 溶岩を継続的に(数秒から数十秒)噴出するタイプと, ガスが主体の継続的な噴火では, 空振波形の立ち上がりにこれまで言われていたような大きな長周期振動が見られたものの, そのあとに短周期の強い波が長く続いた. これらの波形を時間的に拡大すると, 正圧側に偏り, かつ非常に鋭い立ち上がりと緩やかな減圧が特徴的な, 衝撃波に似た波が多数発生していた. このことから, 噴火は大気泡の破裂から始まるものの, その後も新たな圧力源, おそらく小さな高圧気泡が, 次々と破裂していたと推定される。 これまで火山の空振観測は周波数の低い帯域を対象とすることが多かったが, 高周波数まで収録できるシステムを用いたことで, このような知見が得られた.
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