2008 Fiscal Year Annual Research Report
東シナ海における黒潮の冬・春期の不安定化とその経年変動のメカニズムの解明
Project/Area Number |
20540428
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
中村 啓彦 Kagoshima University, 水産学部, 准教授 (50284914)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
仁科 文子 鹿児島大学, 水産学部, 助教 (80311885)
山城 徹 鹿児島大学, 工学部, 准教授 (20158174)
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Keywords | 黒潮 / 沖縄トラフ / 不安定現象 / 季節変動 / 季節風 / 湧昇流 / 海洋大循環モデル / 海洋観測 |
Research Abstract |
北部沖縄トラフの黒潮流路は、夏・秋期に安定化し、冬・春期に不安定化する。この原因を解明するために、海洋研究開発機構が運用している海洋大循環モデル(OFES)のデータを解析した。さらに、理論的考察を行なった。その結果、以下のメカニズムがわかった(現在、論文投稿中)。冬期の季節風は、北部沖縄トラフの黒潮に沿って逆向きに吹く。これによるエクマン輸送と黒潮の相互作用により、黒潮の表層では水平流の発散が起り、湧昇流が励起される。水平流が発散する理由は、夏・秋期の黒潮の海面流速が流軸の両側でexponential分布をしていることによる。しかし、黒潮を横切る鉛直2次元循環(エクマン循環)は、流軸の沿岸側でしか維持できないため、実際には湧昇流は沿岸側でしか起らない。流軸の沖側では、エクマン輸送が一様化し鉛直循環は形成されない。湧昇流は黒潮を陸棚斜面から剥がす効果があるため、北部沖縄トラフでの黒潮は、冬・春期に傾圧不安定化しやすくなる。 この研究を進める中で、黒潮流路の不安的化現象の季節依存性は、北部沖縄トラフのみならず、種子島から九州東方沖でも起ることが予想された。このことを実証するため、1982〜2007年の黒潮流軸データ(海洋情報研究センター提供)を解析した結果、たしかに同様の季節依存性が見られた。現在、より厳密かつ詳細なデータ解析を行なっている。一方、顕著な不安定化現象が起るか否かが年毎に異なる理由は、これまでのところ明らかにできていない。この点を明らかにするため、黒潮流路の安定・不安定化の指標となる新しい時系列を、人工衛星の軌道上での海面高度偏差の時系列データから作成している。さらに、この時系列の再現性を評価するため、平成21年6月〜22年6月の期間に流速の係留観測を行う計画である。現在、そのための準備をしている。
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Research Products
(1 results)