Research Abstract |
研究の目的は,シュードタキライト(以下PT)中のジルコンを用いたフィッショントラック(以下FT)年代を測定し,中央構造線(以下MTL)と跡津川断層の断層活動の履歴を明らかにすると同時に,活断層がいつから存在するかについての年代学的制約を与え,断層が発生させる地質学的背景を考察するための基礎データを与える. MTLでは,三重県多気露頭,長野県大鹿村針ノ木露頭,愛媛県湯谷口露頭の3ヶ所において検討を行った.そのうち湯谷口露頭ではジルコンが含まれていないことから,他の2露頭を対象とした.PTのFT年代測定結果は,多気露頭が60.0Ma(母岩は68-72Ma),針ノ木露頭が62.3Ma(母岩は63.6Ma)となった.特に多気露頭のデータについては,脈が厚く長石類の分解組織などの存在から完全にリセットされた年代と考えられ,トラック長解析もそれを支持している,ここの年代はMTL断層ガウジの最も古い年代とも一致し,MTLの脆性変形の最も古い年代として位置づけられる.跡津川断層真川露頭については,PTと母岩について60Ma前後のFT年代,母岩の白雲母K-Ar年代で149Maとなった.また,一部のPTについては,49~55Maの値のピークが得られた.トラック長解析では部分的なリセットが接触部の母岩で確認された.以上を総合すると,ジュラ紀の冷却年代を持つ花崗岩の冷却時(350-250℃)に,シュードタキライトが形成される前(直前)の60Maに,花崗岩の広域的貫入によって年代がリセットされ,引き続く冷却時(およそ50Ma)にPTが形成したと考えられる. 以上より,従来の他の断層の放射年代も踏まえ,西南日本内帯の花崗岩地殻において主要な断層が発生したのはおよそ50-60Maまで遡ることが,PTでも裏付けられた.このことから,白亜紀後期花崗岩地殻の不均一性を利用して断層が発生のしたと考えられる.
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