Research Abstract |
当該年度は,前期-中期三畳紀のTriassocampe属の形態種を100ほどに区分し,それらを年代的連続性や,時代ごとに形態の連続性の変化を追跡してところ,最終的には10種ほどに整理された.検討対象をこの時期の塔状Nassellariaに拡げて,産出量の定量的な変動を解析した.それらの成果をあわせると,塔状Nassellariaの種数は前期-中期Anisianに,それらの属数は後期Ladinia-前期Carnianで急増する時期があることが判明した.塔状Nassellariaの産出量については,種数が安定している後期Anisian以降に顕著になることが明らかとなった.この結果から,ペルム紀末大量絶滅からの回復期は,種分化が進んだAnisian,放散期は属が出現した後期Ladinian~前期Carnianという2段階に塔状Nassellariaの多様性回復が行われたことが解明された. 放散虫の2段階多様化の前史としての前期三畳紀の層序記録について検討した.産出量が少ない前期三畳紀について,あらたに桃太郎神社セクション下部のコノドント層序の検討を行った.岩相層序もあわせて総合的に断すると,従来Induanに及ぶとされていたこのセクションはOlenekianの範囲に留まることが判明した.さらに,ニュージーランド・アローロックスの下部三畳系の検討も進めた.同定できる放散虫は得られなかったが,Olenekianの中で,コノドントが-斉に多様化する層準が見つかり,放散虫に先んじてコノドンドが多様化したことが判明した.食物網の上位者と思われるコノドントが先に多様化したのは,興味深い. 化石だけでは読み取れない現象については,有機地球化学的手法でその原因を探った.放散虫多様化前史にあたるOlenekian後期でdibenthothiophene,高S/C比,高濃度有機炭素濃集が分析結果で明らかとなり,放散虫の生産量が著しく低い時期は,貧酸素な深海となっていたと解釈された.これらの検証を経て,あらたな課題として,後期ペルム紀と中期三畳紀の放散虫の多様性と比較して,前-中期三畳紀の放散虫の爆発的進化はどの程度の規模であったかを検討する必要があるとの見解を導くことにつながった.
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