Research Abstract |
現生オウムガイ類に保持されている原始的形質を再確認するためフィリピン産のオウムガイNautilus pompiliusを解剖し、鞘形類およびその他の軟体動物と比較した。その結果、16形質が現生頭足類の共有派生形質であることが確認された(1.腕,2.漏斗,3.鯉軟骨が入鯉血管側に存在,4.背腹に対になった顎板,.5.内部構造が単純化した胃,6.胃盲嚢が胃の本体より後部に位置する,7.消化腺が消化腺管を通じて胃盲嚢に連絡,8.腎臓付属器,9.囲心嚢付属器,10.閉鎖血管系,11.脳の発達,12.視葉,13.眼筋,14幼生期を欠き直達発生,15.卵割は盤割で螺旋卵割を行わない,16.外部卵黄嚢を持つ)。さらに、オウムガイと鞘形類の間には少なくとも52形質に及ぶ大きな違いが見られた。これらの形質について、頭足綱の外群である腹足綱およびその他の軟体動物と比較した結果、52形質のうち16形質が原始形質であることが確認された(1.外殻性,2.胚殻が楯状,3.外套膜が薄い,4.殻皮溝がある,5.鰭がない,6.色素胞器官を欠く、7.発光器を欠く,8.鯉は鞘形類では膜によって外套腔内に懸垂するが、オウムガイ類には鯉膜がない,,9.消化腺付属器を欠く,10.脳の発達が弱い,11.脳軟骨を欠く,12.星状神経節を欠く,13.眼はレンズを欠き中空,14.嗅検器が存在する,15.平衡胞が側方に位置する,16.平衡胞の内壁は平滑)。オウムガイ類の腕の数が多いこと、鯉の数が多いこと、腎囲心嚢の器官2対あることは恐らく派生形質である。これらの形質については個体発生の研究がさらに必要である。
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