Research Abstract |
前年度は,殻の成長縁に沿った殻成長勾配率パターン(AGM)のシミュレーションをするために,カサガイとアンモノイド(平巻)とで異なる理論形態モデルを用いていたが,AGMは用いる理論形態モデルに依存する.そこで,カサガイ,巻貝,二枚貝,アンモノイドなどのAGMを共通の基盤で比較するために,全ての管状殻体を表すことのできる統一モデルを開発した.また,AGM空間と理論形態空間との対応関係を解析するために,カサガイとアンモノイドのように全く巻き方が異なる形状同士を同時に座標づけられる球面型形態空間を開発・確立した.こうした理論モデルと理論形態空間は,本研究のみならず,貝殻の理論形態モデルを用いる研究全般に広く利用することができる. また,AGMパターンを表した関数は周期関数にならないので,AGM同士を比較して座標付を行う際には,従来のフーリエ解析などの方法をそのまま適用できない.そこで,開曲線の座標関数のような非周期関数記述子に適用できる手法として,固有形状解析を改良した方法を考案した.この成果は,AGMのような比較的単純なパターンの解析のみならず,アンモノイドの縫合線のような複雑な開曲線の形態測定学に広く適用することができる. また,二枚貝類の殻形態の三次元形態測定を可能にするために,電磁気式三次元位置センサーPatriot System(Polhemus)を元にした三次元デジタイザタブレットを作成し,センサーの位置と向きのデータから自作して装着したデジタイジングポイントの三次元座標を計算するプログラムを開発した.この計測システムを用いて,二枚貝の成長線上の決まった点を繰り返し測定し,x,y,z座標のそれぞれについて測定誤差を見積もった.
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