2010 Fiscal Year Annual Research Report
殻成長率パターンから見た貝殻形態の潜在的多様性と実際の多様性
Project/Area Number |
20540457
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
生形 貴男 静岡大学, 理学部, 准教授 (00293598)
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Keywords | 殻成長率勾配パターン / 理論形態モデル / 理論形態空間 / 貝殻形態 / 形態測定学 |
Research Abstract |
貝殻の外形とそれを決める成長素過程との対応関係は,付加成長殻体の形態形成過程を理解する上で極めて本質的であるが,従来ほとんど注目されて来なかった.そこで本研究では,殻の成長縁に沿った殻成長率勾配パターン「殻口マップ」と殻の外形との関係を明らかにし,そうした観点から貝殻形態の変異や多様性を再評価することを目的として研究を行った.今年度は,殻口マップから外形への写像関係を系統的に明らかにするために,螺環重複部の扱いが比較的容易な平面巻きの殻を有し,かつ外形の個体発生変異が顕著なアンモノイド類に注目し,これらの個体発生変異の傾向が「成長を通じて殻口マップを一定に保つ」という構成形態パラダイムでどこまで成長できるか,理論形態学的方法によって検討した.その結果,1)様々な形状の殻口を持つ殻形態がほぼ同様なパターンの殻口マップから形成し得ることと,2)螺環の拡大率が小さい外形を持つものでは,殻口マップパターンや螺環拡大率を変えることなく臍の広さのみを容易に変えられること,3)同じ殻口マップを用いると,螺環拡大率が大きいもの程,螺環拡大率と臍の広さの間に顕著な負の相関が必然的に生じることなどを理論的に予測した.実際に様々な種のアンモノイドの化石標本についてこの予測を検証したところ,例外が一部見られたものの,概ね理論形態学的に予想された傾向が認められた.また,成長とともに殻口マップパターンを大きく変更しなければならない不等成長様式は実際のアンモノイドでは稀であった.以上の結果は,個体発生のみならず系統発生においても,殻口マップパターンの保守性が殻形態の多様性を制約する作用を有している可能性を示唆する.
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[Journal Article] Enantiomorphs differ in shape in opposite directions between populations2010
Author(s)
Nakaira, Y.,Sutchat, C, Ubukata, T., Seki, K, Utano, H., Panha, S., Asami, T.
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Journal Title
Journal of Evolutionary Biology
Volume: 23
Pages: 2377-2384
Peer Reviewed
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