Research Abstract |
海洋プランクトン珪藻の古生物地理と,新第三紀に起こった海洋表層循環の大きな変化(亜熱帯循環の成立,パナマ地峡の形成、亜寒帯循環の成立など)との対応関係を,国際深海掘削計画で採取され,微古生物標本・資料センターに保管されている珪藻スライドを用いて検証した.具体的には,生存期間が長く,堆積物に多産する助Thalassionema属とCavitatus属を主な解析対象に,1)それらの種,変種,morphologic typesの分類学的検討と,2)その層序分布を,北太平洋(ODP,site 884),赤道太平洋(DSDP,sites 574,803,806),南太平洋(ODP,site 1023),インド洋(DSDP,site 266),そして南大洋-南太平洋(DSDP,sites 274,278)から採取された8本のコアを用いて明らかにし,3)それらの層序分布をもとに,Thalassionema属とCavitatus属の古生物地理図を作成した.さらに,4)これらの古生物地理図と海洋の表層循環変遷史とを対比することによって,上記検証を行った. Cavitatus属は,始新世~後期中新世まで産出し,それらの分布や多様化と表層循環との明瞭な対応関係が認められなかった.一方、Thalassionema属は、前期中新世~完新世まで産出し,前期/中期中新世に顕著な地理的分布の変化が認められた.即ち,後期漸新世に東赤道太平洋で成立した群集は,およそ1600万年前に北太平洋北部に,1700万年までに南大洋にそれぞれ拡散して,300万年前前後にそれらの一部が高緯度域から消滅したことが明らかになった.これらは,前期~中期中新世とされる亜熱帯循環の始まりや,後期中新世~前期鮮新世とされるその成立と,Thalassionema属の拡散・消滅との対応を示唆する.
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