2010 Fiscal Year Annual Research Report
キラル分子の光誘起電子コヒーレンスの発現機構に関する量子動力学的研究
Project/Area Number |
20550004
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
藤村 勇一 東北大学, 大学院・理学研究科, 名誉教授 (90004473)
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Keywords | キラル分子 / 電子動力学 / 環電流 / キラリティー / 非断熱相互作用 / 光誘起電子コヒーレンス / 電子・核波束運動 / 直線偏光フェムト秒レーザー |
Research Abstract |
我々は,角運動量をもたない直線偏光レーザーパルスを用いてキラル環状芳香族分子の擬縮重した一組の電子状態にコヒーレント励起したときに起こる電子ダイナミクス(コヒーレント電子ダイナミクス)に関する理論的研究を進めてきた.特に,これまでの電子波束理論の扱いでは無視されてきた分子振動自由度を考慮し,電子・核波束両運動を同等に扱い,擬縮重電子状態がコヒーレント励起されると核波束運動がS体とR体では異なることを見出しだした.キラル芳香族環状分子において,角運動量をもたない直線偏光フェムト秒レーザーパルス照射により,その分子内電子の一方向回転が誘起され,環電流が生成される.さらに,その回転方向は分子のキラリティーに依存する.それは,定性的に言えば,光によって生成された元の核波束と非断熱相互作用によって断熱ポテンシャルを超えてきた波束とが正(負)の干渉をS(R)体で起こすためである.表面あるいは空間に固定されているキラル分子ではお互い電子遷移ベクトルは鏡像となっているので同じ偏光パルス励起で異なった非断熱電子状態線形結合が生成される.これが相互作用の大きさに違いを生じさせる.今年度は,非断熱相互作用,振動モード間相互作用,非調和相互作用の寄与を解析手法により行い,波束運動結果を定量的に解析した.更に,緩和効果をと入れることができる密度行列の方法を開発した.これにより,今後の研究を発展に欠かせない,より大きなキラル分子のコヒーレント電子ダイナミクスの取り扱いが可能となる.
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Research Products
(11 results)