2008 Fiscal Year Annual Research Report
分子熱浴に接した多原子分子系のクラマース-フォッカー-プランク方程式の新展開
Project/Area Number |
20550011
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
長岡 正隆 Nagoya University, 大学院・情報科学研究科, 教授 (50201679)
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Keywords | 化学物理 / 原子・分子物理 / シミュレーション工学 / 自己組織化 / 非平衡 |
Research Abstract |
凝集系で揺らいでいる溶質分子のダイナミクスについて、溶質分子の内部自由度に着目することにより、分子構造に対応する分布のダイナミクスとしてKramers-Fokker-Planck(KFP)方程式を導入することができる。最も単純なシステムは内部自由度が1である二原子分子であるが、対応する一次元KFP方程式では溶質分子に応答する周囲の溶媒の影響について考慮されていない。我々はその影響を数値的に評価するために、フッ化水素(HF)分子を含む水溶液系について、独立した100万本の分子動力学計算から、HF分子の振動エネルギー緩和に対する溶媒構造の揺らぎについて調査した。位相空間上の100万点は3つの自由度をもつ分布を計算することを保障する。 エネルギー緩和初期の0.1psについて解析した。HF分子周囲の溶媒分子の運動エネルギーを三次元空間分布として計算したところ、HF分子の振動エネルギーが第一溶媒和層の水分子に、振動を伴いながら伝播していることが分かった。このエネルギーを水分子の並進・回転・内部振動の成分に分離して評価したところ、平衡状態では成立しているエネルギー等分配則が破れ、特に内部振動についてのエネルギー伝搬が優位に現れていることが分かった。 我々はこれまでの研究で、KFP方程式を拡張する一つの方法として溶媒の熱力学情報を活用する方法を提案してきた。この方法では溶質周囲の温度勾配が引き起こす熱的な力が導入され、また、この揺らぎはメモリーカーネルにも関係している。本研究は、水分子の内部自由度に対応するエネルギー揺らぎが溶質分子のダイナミクスに与える影響について示した。
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Research Products
(16 results)