2009 Fiscal Year Annual Research Report
分子熱浴に接した多原子分子系のクラマース-フォッカー-プランク方程式の新展開
Project/Area Number |
20550011
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
長岡 正隆 Nagoya University, 大学院・情報科学研究科, 教授 (50201679)
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Keywords | 化学物理 / 原子・分子物理 / シミュレーション工学 / 自己組織化 / 非平衡 |
Research Abstract |
凝集系の非平衡状態を統計力学的視点で解析するためのプログラムを作成した。既存の分子動力学計算プログラムAMBERの中で多数の初期状態に対する分子動力学計算を行い、同時に統計処理も行うようプログラムを改良することで、現実的な計算時間で多数の統計量を計算することが可能になった。 このプログラムを用いて、HF分子を含む水溶液に関するエネルギー緩和過程について調査した。HF分子をそれぞれ並進励起・回転励起・振動励起させたときの、溶媒水分子の並進・回転・振動に対応する運動エネルギーを時空間分布を10fs、0.2Åの解像度で計算した。この結果、HF分子から溶媒へのエネルギー伝搬の過程で、HF分子の振動モードと水分子の振動モードとの間に結合があることが分かった。各振動モードに対するエネルギー伝搬の仕方はそれぞれ異なり、特に分子内振動モードに関しては励起HF分子に対する水和構造の強固さに関係して、HF分子近傍の水分子群の運動エネルギーが上昇した。一方、回転モードや並進モードは熱伝搬が分子内振動モードと比較して速く、このことはいくつかの文献の報告通りである。しかしながら、振動緩和過程においては、分子内振動モードを利用したエネルギー伝搬経路は無視できるものではなく、また溶媒和構造に伝搬の仕方が影響を受けることから、疎視化手法としてこの効果を露わに取り入れる必要があることが分かった。また、年度途中に第3回分子科学討論会名古屋2009において、中間報告を行った。
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Research Products
(22 results)