2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20550013
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐藤 啓文 京都大学, 工学研究科, 教授 (70290905)
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Keywords | 共鳴構造 / 電子状態 / ab initio / 分子軌道法 / 原子価結合法 |
Research Abstract |
本研究課題においては、これまで我々が開発して来た双直交な第二量子化演算子表現に基づく共鳴構造理論の発展を図るとともに、この解析法を基にして既存の方法とは違った視点からの新規理論の創出を目標として研究を進めている。これまでに我々が開発して来た方法は、二電子間の関係を扱う表式となっていることから、カルボニル基などの非局在化が著しい共役系電子を扱うことが出来なかった。そこで四電子系へ拡張した演算子を新たに導出し、本年度はこの方法を学術論文として発表した。新理論で得られる共鳴構造の重みは、Mulliken電荷と無矛盾になるように定義されており、さまざまな分子に対する量子化学計算の結果を解析し、従来法との比較を行ったところ、定量的にほぼ一致する結果が得られた。一方で、化学反応などは電子の非局在化が顕著なために従来理論では解析が不可能である。新理論により得られた結果は、原子価結合法やMOVB理論などによる既報値と良好な一致を示した。しかしより多電子を含む系旨への理論の一般化に関しては、系統的な導出が存在しない上に演算子が複雑化するために、拡張性の高い一般表式を得ることは困難であることが明らかとなって来た。またスピン固有状態との対応については更なる考察が必要であることが分った。実際には四電子系を扱うことで多くの分子の電子状態の本質を記述できるものと考えられることから、今後はこの解析法を幅広い系に対して用いることで、その適用範囲を明らかにして行きたい。またこれと並行して、上記理論の応用を企図して、イオン結合の典型例であるフッ化マグネシウム、電荷移動型の相互作用系としてヘキサメチルベンゼン-テトラシアノエチレンの系について計算を行った。
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Research Products
(5 results)