2011 Fiscal Year Annual Research Report
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20550013
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐藤 啓文 京都大学, 工学研究科, 教授 (70290905)
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Keywords | 共鳴構造 / 電子状態 / ab initio / 原子価結合法 / 分子軌道法 |
Research Abstract |
本研究課題においては、これまで我々が開発して来た双直交な第二量子化演算子表現に基づく共鳴構造理論の発展を図るとともに、この解析法を基にして既存の方法とは違った視点からの新規理論の創出を目標として研究を進めている。本年度は、主に有機化合物を対象とした計算を行い、化学反応や励起・発光スペクトルなどをターゲットとし電子状態の特徴を引き出し、溶媒などの外場の影響についても調べた。具体的には以下の通りである。 (1)水中のエタノールアミン(MEA)は二酸化炭素と結合し、工業的な回収材料として注目されている。この反応はMEAと二酸化炭素の結合形成とそれに引き続くプロトン脱離の二段階から構成される。前半部分については、水中では特異的な結合が生成することを以前に報告しており今回は後半部分についての解析を行った。この結果、プロトンの脱離過程においてMEAが塩基として働き、その際に二酸化炭素由来のC-O結合の電子構造変化が反応において大きな役割を果たすことを見いだした。共鳴構造の解析を行ったところ、そのイオン結合性(C+O-)は62%にもおよび、周囲の溶媒の水分子と強い水素結合を形成する。一方でアミノ基においては過剰電荷が全体に広がっていて比較的その寄与は小さいことがわかった。 (2)TEMPOは極性/非極性を問わず様々な溶媒に溶けることから、そのnπ*遷移を通じて、ルイス酸性を測る指標になると言われている。本課題ではTDDFT法をRISM-SCF-SEDD法に組み合わせて、水、メタノール、アセトニトリルおよびジククロエタン中の吸収エネルギーを計算した。遷移において重要であるN-O結合の結合次数は孤立系で1.393であるが、溶媒環境によってそれぞれ1.390(ジクロロエタン)、1.389(アセトニトリル)、1.383(メタノール)、1.375(水)と溶媒の極性に応じて変化しており、電子状態への影響が系統的に理解できることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題で開発した解析法などに基づき、分子の電子状態を特徴づける基礎的なデータは当初の予定以上に着実に得られている。一方で、新規理論については引き続きその開発の可能性を検討する必要がある。以上を総合すると、概ね順調に進展しているものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究は概ね当初の予定通り進行しており、今後大きな計画変更は必要ないと考えているが、新規理論についてより重点的な検討を行う必要がある。また他の解析法との比較など、より多面的な立場から研究を遂行する。
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