2010 Fiscal Year Annual Research Report
分子理論を基礎とする地球惑星大気の精密物理化学研究分野開拓
Project/Area Number |
20550019
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
橋本 健朗 首都大学東京, 理工学研究科, 准教授 (40202254)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
笠井 康子 情報通信研究機構, 電磁波計測研究センター, 主任研究員 (60281630)
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Keywords | 原子・分子物理 / 大気現象 / 地球化学 / 分子理論 |
Research Abstract |
地球惑星大気の放射を担う分子の分光学と反応を担う分子の素過程に関連する諸量を算出する分子計算システムと、結果を活用して大気実課題を研究する大気計算システムを、具体的応用課題に取り組みながら構築することを大きな目標してきた。今年度取り上げた課題は、地球温暖化への寄与が疑われる酸素や窒素分子と錯体水との錯体を主なターゲットに、存在量の大気パラメータ依存性および全地球分布を見積もる研究で、酸素-水錯体についての成果を論文に発表した。この錯体については、笠井らがマイクロは分光法で回転定数を実験的に求め、橋本らの理論計算がそれを精度よく再現している。したがって、実験室分光実験-分子理論計算-大気シミュレーションにより、物理化学研究を大気化学の考察までつなぐことができた。活用した分子計算の内容は、非調和大振幅振動解析を元にした錯体の分配関数であり、その正しい温度依存性を与える世界で唯一のデータである。 対流圏上層部では、酸素-水錯体の存在量(体積混合率)は水蒸気量に強く相関していた。赤道地域で高く、南北両半球の中高緯度地域で小さい。一方成層圏では温度が赤道地域で極小となり、水および酸素-水錯体の存在量も少ない。両半球の高緯度地域の成層圏では、温度上昇と錯体存在量減少の相関が見られた。水自身の存在量は北半球が南半球より多いが概して地域依存性は小さい。 地表面での錯体存在量は1~250ppbv程度で、一酸化炭素や一酸化二窒素に匹敵することから、対流圏化学に重要な役割を果たすと考えられる。 そのほか、多次元非調和振動解析の基礎理論とオブジェクト指向によるプログラム開発、大気光化学に対する同位体効果の研究を行った。
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