2008 Fiscal Year Annual Research Report
強レーザー場による空間分割を利用した量子制御理論の構築
Project/Area Number |
20550021
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
菅原 道彦 Keio University, 理工学部, 講師 (40276415)
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Keywords | 化学物理 / 量子制御 / 空間分割 / レーザー |
Research Abstract |
レーザーを用いた量子制御を分子系への応用をする際の大きな課題であった、(1)緩和過程の回避、(2)量子制御に要する時間スケールの調整、について強レーザー場を用いた量子状態空間の分割を利用することにより以下に示すような成果を上げることが出来た。 強レーザー場と分子系との相互作用をドレスト描像を用いて記述し、シュレディンガー方程式をラプラス変換して得られるグリーン関数表示の方程式に射影演算子法を適用することにより定式化を行った。ここで、P、Q空間をそれぞれ、「(直接的光学遷移が許されない)制御対象準位からなる部分空間」、「緩和過程が付随する中間準位からなる部分空間」と定義し目的の射影演算子を構成した。さらに、射影演算子法を適用しP空間の変数のみで構成される制御対象系のグリーン関数を得て、このグリーン関数の表式の中のレーザーパラメーター依存性を詳細に検討し、P、Q空間を擬似的に孤立化させるために必要なレーザー照射条件を明らかにした。この結果、P-Q空間の分離は、Q空間ないの準位を強レーザー場によって強く結合させることによって実現されることが明らかになった。また、射影演算子法を用いて得られるP空間のグリーン関数の形式がレゾルベント形式に似た形で与えられることを利用し、この擬似レゾルベント形式中の変数zにP空間の零次の縮退したエネルギーを代入することによって、孤立化されたP空間の動力学を規定する有効ハミルトニアンを導出した。このハミルトニアンを解析した結果、強レーザー場による空間分割により、中間準位の緩和過程が抑制されると同時に、P空間内の動力学の時定数を自在に調整できることが明らかになった。上記の手法を、枝分かれ型、梯子型4準位系などに適用し、その有用性を確認した。
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