2009 Fiscal Year Annual Research Report
強レーザー場による空間分割を利用した量子制御理論の構築
Project/Area Number |
20550021
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
菅原 道彦 Keio University, 理工学部, 講師 (40276415)
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Keywords | 化学物理 / 量子制御 / レーザー / 空間分割 |
Research Abstract |
強レーザー場照射による量子状態空間分割描像を具体的な分子モデル系に適用し、コヒーレント量子制御における有用性を明らかにした。緩和モデル系として中間準位が等間隔に分布するバックグラウンド準位と均等に結合するBixon-Jortnerモデルを採用し、中間準位と補助準位を強レーザー場で結合させることにより中間準位を制御対象空間から分離することを試みた。数値計算の結果、この空間分離によってインコヒーレントな準位分布の流出を抑制でき、始状態から終状態へのほぼ100%分布移動が可能であることが示された。さらに、実際の分子として多くの振動モードが非線形相互作用によって結合しているSCC1_2分子について本手法を適用し、特定のCS伸縮運動モードの選択励起が可能であるかをFORTRANによる数値計算シミュレーションによって検証した。この結果、中間状態と始・終状態間を直接レーザーによって結合させた場合は、50%程度の分布の損失(多モードへのエネルギー散逸)が生じるのに対し、補助準位を導入し空間分割を実現した場合は散逸過程が抑制され98%程度の割合で選択的励起が実現されている。この緩和過程の抑制効果については、グリーン関数表示と射影演算子法を組み合わせた定式化、二次の摂動論の何れを用いても理論的説明が可能であることを示すとともに、分割の度合いの定量的な評価法についても明らかにした。以上の成果により、従来コヒーレント制御が困難であると考えられていた分子内緩和が存在する系を、疑似的に小数準位系(2,3準位系)として取り扱うことが可能となり既知のπパルス制御や断熱挿引を用いた制御法が適用できることが判明した。この結果は、複雑なレーザーパルス成形が必要であると考えられていたコヒーレント量子制御手法の新たな可能性を示唆している。
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Research Products
(5 results)