2011 Fiscal Year Annual Research Report
強レーザー場による空間分割を利用した量子制御理論の構築
Project/Area Number |
20550021
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
菅原 道彦 慶應義塾大学, 理工学部, 講師 (40276415)
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Keywords | 化学物理 / 量子制御 / レーザー / 空間分割 |
Research Abstract |
前年度までに構築した強レーザー場照射による空間分割描理論がもたらす緩和過程の抑制効果、特に振動エネルギー再分配の抑制機構が具体的な分子系であるチオホスゲンに対して適用可能であるかをFORTRAN言語による数値的計算を通して検討した。この際、高分解赤外分光による振動状態スペクトルを再現するモデルハミルトニアンを採用し、調和振動子と量子化した光子場数状態の直積を基底にとり表現されたハミルトニアン行列を対角化し強レーザー場下における分子状態の時間発展を計算した。解析の結果、具体的な分子であるチオホスゲンにおいても位相緩和を効果的に回避するとともに制御対象となる少数準位系を抽出し、その準位分布をπパルス法等の従来法で制御可能であることが明らかになった。さらに、上記の制御機構で必要とされる定常レーザー場の強度を定量的に評価したところ、上記の計算において考慮されていない多光子遷移による解離反応やイオン化などの副過程の影響が無視できる程度であることが示さたため、得られた結果が実際の実験に適用する上で有用な情報であることが確認できた。以上は、位相緩和によるコヒーレンスの破壊が大きな障害と認識されている化学反応のコヒーレント量子制御や分子量子素子の開発等の研究分野において重要な結果であると言える。 一方、各状態間の位相関係をレーザーパルスが作り出す干渉効果によって積極的に再構成するという描像を用いた位相緩和の回復制御機構の検討も行った。この際、2準位系におけるフォトンエコーの解釈に使用されるブロッホベクトルモデルを多準位系に拡張し、光学過程や緩和過程をベクトルの運動としてとらえることにより物理描像に基づいたレーザーパルス列の直感的な設計が可能となった。
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