2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20550025
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
谷口 吉弘 立命館大学, 生命科学部, 教授 (70066702)
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Keywords | インスリン / アミロイド線維 / 変性中間体 / 圧力 / 温度 / 高エネルギー構造 / FT-IR / NMR |
Research Abstract |
インスリンアミロイド形成(pH4.0,60℃)の初期、中期、後期段階でそれぞれAFM観察を行った。その結果初期段階では顆粒状凝集体、中期段階では環状凝集体、後期段階では針状線維が観察された。顆粒状凝集体は他の蛋白質でも線維化の初期課程で観察されている。また、溶液条件下でのひも状と針状のアミロイド線維形体はβ2ミクログロブリンなどでも観察されており、クロスβシート構造からなる線維に共通の形体と考えられる。環状凝集体は明確な繊維状態ではないことや、十分にインキュベートされた試料からは観察されない点から線維化の途中段階で生じる凝集物と考えられる。 温度可変(20℃~40℃)圧力可変(1atm~3000atm)のインスリンの1次元NMR測定から、化学シフト値についての温度・圧力効果を調べた。温度上昇に伴い、A鎖の複数のアミド水素について、高磁場シフトが観察され、その変化は可逆的であった。一般に、アミド水素の高磁場シフトは水素結合距離の増加を意味し、蛋白質内での水素結合を形成しているアミド水素についての化学シフト値の温度依存性は-0.0045ppm/Kと見積もられている。本実験では観察されたアミド水素の温度依存性は-0.0045ppm/Kよりも大きな値を示したことから、熱揺らぎによる水素結合距離の膨張に加えて、変性中間体への構造転移の寄与を含むことが考えられる。また、圧力増加に伴うアミド水素で顕著は低磁場シフトが観察された。これらは2000atmまでは直線的に変化することより線形的な力学応答と考えられる。低磁場シフトは水素結合距離の短縮を意味することから、加圧により、B鎖の一部が圧縮されたことによる。2000atm以上では、アミド水素ピークが顕著に広幅化していることから、部分的な水和が促進されたと考えられる。化学シフト変化も低圧領域に比べて非線形性が見られることから、異なる構造状態への転移が生じた可能性が高い。
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Research Products
(6 results)