2009 Fiscal Year Annual Research Report
フラーレンの光解離で生成する中性フラグメント散乱分布の状態選択的画像観測
Project/Area Number |
20550029
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
片柳 英樹 Institute for Molecular Science, 光分子科学研究領域, 助教 (00399312)
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Keywords | ナノチューブ・フラーレン / 化学物理 / 物性実験 / 可視化 / 反応動力学 |
Research Abstract |
フラーレン類の放射光による光分解の機構を明らかにすることを主眼として本研究を実施している。気相フラーレン類の解離性光イオン化で生成する中性C_2フラグメントの三次元散乱分布の画像観測を目指す。これにより、遷移状態のポテンシャルエネルギー曲面の形状や励起状態の寄与など、光分解機構の詳細を明らかにできると考えている。 平成21年度は、20年度に性能試験を行った、フラグメントの質量選別が可能な画像観測装置により、フラーレン(C_<60>)から解離生成した、C_<58>^<2+>からC_<50>^<2+>までの、偶数個の炭素を失った2価のイオン性フラグメントの散乱分布を測定し、解離における並進エネルギー放出の大きさを求めた。イオン性フラグメントの測定は、中性フラグメントの測定と相補的な結果を得ることができ、中性フラグメントの測定の予備的研究として重要であると考え実施した。 この装置では、放射光のエネルギーを掃引することにより親イオン(C_<60>^<2+>)の内部エネルギーを変化させることができる。この特徴を用いて、余剰エネルギーの大きさと、各フラグメントの並進エネルギーの関係を初めて求めることができた。その結果、いずれのフラグメントも、余剰エネルギーをフラーレンの振動自由度数(174)で割った程度の並進エネルギーを持つことがわかった。これは、各フラグメントが段階的にC_2を放出する機構で生成すると仮定すれば、遷移状態で一つの自由度が反応座標となり、残りの自由度との間で余剰エネルギーが統計的に分配されていると説明できる。また、C_<50>^<2+>生成の段階で並進エネルギー放出が小さいことも分かった。これは、炭素数50のクラスターが、その前後の炭素数に比べて安定であることを示唆している。 22年度においても、中性フラグメントの測定を試みると共に、イオン性フラグメントの測定をC_<70>などの高次フラーレンに拡張して行う予定である。
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