2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20550037
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
小野 克彦 Nagoya Institute of Technology, 大学院・工学研究科, 助教 (20335079)
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Keywords | 有機導体 / 半導体物性 / 構造・機能材料 / 先端機能デバイス / 環境技術 |
Research Abstract |
有機トランジスタの開発において、ペンタセン前駆体の合成研究が注目されている。これは、塗布型材料の開発がこの分野で求められているからである。これまでの調査によると、6,13-ジチエニルペンタセン(1a)は、太陽光存在下で溶存酸素と光反応を起こし、酸素付加体2aを定量的(単離収率81%)に生成した。また、この酸素付加体2aの薄膜にUV光(254nm)を照射すると、ペンタセン1aが再生することを見出した。ペンタセン1aで高い半導体移動度(0.1cm^2V^<-1>s^<-1>)が報告されていることから、この反応が効率的に進行する分子システムを開発できれば、環境に調和した有機トランジスタ作製プロセスを構築できる。本年度は、新規ペンタセン誘導体の開発を目的に、ビス(2,2'-ビチエニル)体(1c)とビス(フェニルチエニル)体(1d)を合成研究した。当初、これらの合成を1aと同様な方法で検討したが、転移反応が優先的に進行して目的物質は得られなかった。そこで、ビス(ヨードチエニル)体(1e)を合成し、これと芳香族ボロン酸とのSuzuki反応を行った結果、1cと1dを収率16%と8%で得ることに成功した。1cと1dの最長波長吸収帯は1aと同様にペンタセン骨格に基づいており、1cと1dでわずかな長波長シフトが観測された。また、CV測定で酸化電位と還元電位の差が減少し、両性が強まった。これは、π電子系が拡張した影響と考えられる。ペンタセン軸に加えて、置換基軸方向へのπ電子の非局在化が増大したことから、半導体移動度にも影響が現れると予想される。さらに、1cの酸素付加反応を調査した。UV-vis吸収スペクトルで追跡した結果、速度定数7×10^<-5>s^<-1>を観測した。この値は1aのもの(1.7×10^<-3>s^<-1>)と比較して小さく、置換基のπ電子系が拡張したために溶液中での安定性が増大した。
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