2008 Fiscal Year Annual Research Report
キノン縮環エポキシケトンの転位に基づく新規多環状化合物の合成法の開発
Project/Area Number |
20550040
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
大島 巧 Osaka University, 大学院・工学研究科, 教授 (40107082)
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Keywords | キノン / エポキシケトン / ルイス酸 / 転位反応 / 多環状化合物 |
Research Abstract |
多環状化合物は、自然界にもアルカロイド等として広く存在し、その生物作用や神経作用、薬理効果に関する研究が精力的に行われている。しかし、有機合成化学的にこのような化合物を合成することは一般に困難であり、多段階の合成操作を必要とする。このような状況を踏まえ、本研究では、電子受容性の共役分子であるキノンに着目し、シクロプロパン環、シクロブテン環、オキシラン環などの小員環合成ブロックを縮環させた多官能性高歪化合物を設計合成し、酸触媒による転位反応を行い新規多環状化合物の簡便な合成法の開発を目的とした。 具体的化合物として、ジベンゾシクロヘプテン環をスピロ結合で縮環したホモキノンエポキシドを合成し、BF_3・OEt_2触媒によるエポキシドの酸触媒分解を行い、分子内渡環環化反応による新規多環化合物を高収率で得た。また、その反応速度解析からジベンゾシクロヘプテン環のコンホメーションが反応性に大きく影響することを明らかにした。この理由として、遠隔π-アリール基の関与によりエポィシドの開裂が促進されることが明らかとなった。 また、ジアリール基を有するホモベンゾキノンエポキシドのアリール基に各種置換基を導入した場合は、やはり遠隔π-アリール基の関与が認められ、エンド側のパラ位に電子供与性置換基が存在すると数千倍も反応が加速されることがわかった。しかし、エキソ側の置換基の加速効果は小さく2倍程度であった。これらの知見は、エポキシドの合成化学的利用をはかる上で重要な知見を与える。 さらに、今後、シクロプロパン環の替わりにシクロブタン環を縮環したキノンのエポキシドに反応を展開したい。この化合物では、キノンカルボニル酸素原子への酸触媒の配位も重要となり反応のスキームが大きく異なる可能性がある。したがって、系統的な研究によって新たな骨格変換反応の開発とキノン骨格を有する新規多環状化合物のライブラリーの構築が期待される。
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Research Products
(11 results)