2010 Fiscal Year Annual Research Report
新構造のリンイリド含有共役複素環の構築とリン含有π電子系機能分子開発への応用
Project/Area Number |
20550046
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
林 実 愛媛大学, 理工学研究科, 准教授 (20272403)
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Keywords | 合成化学 / 複素環 / 共役系 / リン / ホスホール |
Research Abstract |
リンを含む複素環π電子系化合物の研究は少なく,最近になってようやく注目されつつある。本研究ではこれまでに確立した3種類の方法を用いて,5価リン原子を複素環π電子系に含む3-オキソ・λ^5-ホスホール類の合成に成功している.本年度は昨年度に引き続いて置換誘導体の合成と評価を行い,特にホスホール環のリン原子α位(2,5位)様々な置換基導入によって立体的または電子的に吸収波長の調整が可能であることを示した.そこで次に,ホスホール骨格及び周辺置換基に,外界からの刺激によりその電子状態や立体構造を変化させる部位を組み込んだ誘導体を設計・合成し,当該ホスホール骨格の大きな色調変化を利用した化学センシングの可能性について検討した。その結果,特に4位にアシル基を導入した化合物については,3-オキソホスホールの環内カルボニル基と1,3-ジカルホニル構造を取ることから,金属への選択的配位が期待され,実際に各種金属イオンとの錯形成について調査したところ,Sn(II)イオンに対して選択的かつ可逆的な色調変化を与えることがわかった。また,この現象が金属の配位によるアシル基の配向変化に起因する5位置換基の共役変化によるものであることを明らかにした。このことから,ホスホール環が比較的自由度の高い,分子設計可能な機能性色素の発色基として有用であることを示せた。 一方,多様な誘導体を合成できるようになった3-オキソ-λ^5-ホスホールから,λ^3-型ホスホールへの新しい変換反応の開発を試み,λ^3-型ホスホールの前段階までの変換反応を達成しているが現在までに完了することは出来ておらず,今後検討を継続する必要がある。さらに本研究の検討過程で新たに別のリンイリド含有共役複素環が生成することを発見しており,これについても今後検討を継続する予定である。
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