2009 Fiscal Year Annual Research Report
希土類が物性の主役となるペロブスカイト複合酸化物の結晶化学と磁気的性質
Project/Area Number |
20550052
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
日夏 幸雄 Hokkaido University, 大学院・理学研究院, 教授 (70271707)
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Keywords | 希土類元素 / 白金族元素 / ペロブスカイト / 磁気的性質 / 磁化率 / 比熱 / 磁気秩序 / 磁気的フラストレーション |
Research Abstract |
希土類は遷移金属と比べ、サイズが大きいため、ペロブスカイト型酸化物ABO_3を形成すると、物性を決定するBサイトに入らずAサイトに入るため、希土類が物性の主役とならない。一方、ペロブスカイト型構造は極めて高い化学組成に関する自由度を持ち、適当な組成および合成条件を選択することにより、結晶構造および金属元素の原子価状態を制御することが可能である。そこでペロブスカイト型酸化物ABO_3で希土類を物性の表舞台に立たせるため、サイズの大きく異なる白金族元素と組み合わせることにより、(1)ペロブスカイトABO_3のBサイトに、希土類を入れることができ、しかも希土類と白金族元素は構造的に秩序化したペロブスカイト化合物を系統的に新規合成した。(2)すべての化合物は低温で反強磁性転移し、その磁気的性質を中心に、これら2つの元素の相互作用に伴うf-d混合電子系の示す新しい磁気的性質を見出した。 本年度の研究では、12層構造を持つ新規ペロブスカイト型化合物Ba_4LnRu_3O_<12>,Ba_4LnIr_3O_<12>を合成し、その結晶構造と磁気的性質を明らかにした。3つのRuO_6八面体(IrO_6八面体)は面共有し、Ru_3O_<12>(Ir_3O_<12>)トライマーとなり、これがLnO_6八面体と頂点共有することにより、12層構造のペロブスカイト型複合酸化物を形成している。格子定数は3価の希土類イオン半径に対して単調増加する傾向があるが、Ln=Ce,Pr,Tbでは、この傾向から逸脱し、Lnは4価の酸化状態にあることがわかり、化合物の電荷配置は、Ln=Ce,Pr,TbではBa_4Ln^<4+>M^<4+>_3O_<12>、その他の希土類ではBa_4Ln^<3+>M^<4.33+>_3O_<12>であることがわかった。Ru_3O_<12>(Ir_3O_<12>)トライマー中のRu_3O_<12>(Ir_3O_<12>)トライマーの磁気モーメントが希土類の磁気モーメントと相互作用することにより、低温で反強磁性転移したことを磁化率、比熱、中性子回折測定の結果より、明らかにした。
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