2010 Fiscal Year Annual Research Report
希土類が物性の主役となるペロブスカイト複合酸化物の結晶化学と磁気的性質
Project/Area Number |
20550052
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
日夏 幸雄 北海道大学, 大学院・理学研究院, 教授 (70271707)
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Keywords | 希土類元素 / 白金族元素 / ペロブスカイト / 磁気的性質 / 磁化率 / 比熱 / 酸化物 / 反強磁性 |
Research Abstract |
ペロブスカイト型酸化物(ABO_3)ではBサイトに入る金属元素の電子状態が化合物の物性に大きな影響を与え、希土類(Ln)と白金族元素(M)をBサイトに共に含む化合物では、これらの間に働く相互作用による特異な磁気的挙動を示す。 本年度の研究では、LnO_6八面体とM_3O_<12>トライマーからなる新規化合物(12L-ペロブスカイトBa_4LnM_3O_<12>)の合成を試みた。格子定数は3価の希土類イオン半径に対して単調増加する傾向があるが、Ln=Ce,Pr,Tbのみこの傾向から逸脱し、このことからLnは4価の状態にあると考えられる。従ってこれらの化合物の電荷配置は、Ln=Ce,Pr,TbではBa_4Ln^<4+>M^<4+>_3O_<12>、その他の希土類ではBa_4Ln^<3+>M^<4.33+>_3O_<12>と考えられる。Ru化合物では、Ba_4CeRu_3O_<12>はCurie-Weiss則に従う常磁性挙動を示すが、Ln=Ce以外の化合物は低温で反強磁性転移した。比熱測定から磁気エントロピーを求めたところ、Ba_4Ln^<3+>Ru^<4.33+>_3O_<12>の磁気転移に伴うエントロピー変化は5.5J/mol K程度だった。対応するIr化合物(Ba_4Ln^<3+>Ir^<4.33+>_3O_<12>)は1.8KまでCurie-Weiss則に従う常磁性挙動を示したが、Ln=Ce,Pr,Tb化合物はそれぞれ10.5,35,16Kで反強磁性転移した。それらの結果について考察した。Ba_4Ln^<3+>Ir^<4.33+>_3O_<12>のIr_3O_<12>トライマーには5d電子が14個あり、Ir_3O_<12>の分子軌道に電子をつめていくとスピンS=0となる。従ってBa_4Ln^<3+>Ir^<4.33+>_3O_<12>はLn^<3+>の示す常磁性挙動を示した。Ba_4Ln^<4+>Ir^<4+>_3O_<12>のIr_3O_<12>には5d電子が15個あるため(S=1/2)、これが化合物の磁性に寄与し、Ln=Ce化合物は10Kで反強磁性転移し、希土類が磁性を持つPr、Tb化合物ではさらに高い転移温度で反強磁性磁気秩序が見られた。一方、Ba_4Ln^<3+>Ru^<4.33+>_3O_<12>のRu_3O_<12>トライマーには4d電子が11個あるため(S=1/2)、Ru_3O_<12>トライマーが化合物の磁性に寄与し、Ba_4Ln^<3+>Ru^<4.33+>_3O_<12>はLnの種類にかかわらず、同程度の温度(3~11K)で反強磁性転移を示した。
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