2008 Fiscal Year Annual Research Report
中性子およびX線回折による生体関連分子-水分子間構造の直接決定
Project/Area Number |
20550055
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
亀田 恭男 Yamagata University, 理学部, 教授 (60202024)
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Keywords | 溶液構造 / 水和構造 / 生体関連分子 / 水素結合 / 中性子回折 / 同位体置換法 / 尿素 / 分子間構造 |
Research Abstract |
非常に濃厚な尿素水溶液中における、尿素-水分子、尿素-尿素および水分子間水素結合構造に関する直接的な知見を得る目的で、^<14>N/^<15>NおよびH/D同位体分率のみが異なり、他の条件は全く同一とした合計8種類の25mol%尿素水溶液に対して中性子回折実験を実施した。 同位体の違いによる散乱強度の差に注目した解析より、N-H、N-O(N-C)、N-N、H-H、X-HおよびX-X(X : O, N, C)分子間部分構造因子を求め、これ等のフーリエ変換より対応する分子間部分分布関数を求める事ができた。観測された分子間部分構造因子に対する最小二乗法解析より、最近接分子間距離、平均振幅および配位数を求めた。 最近接N-OおよびN-H距離は各々3.14(1)Åおよび3.42(1)Åであり、アミノ基周囲には2.2(1)個の水分子が水素結合している事が明らかになった。さらに、最近接N-N距離が4.71(5)Åである事から、25mol%尿素水溶液中では尿素分子同士が集合した構造が生じている事が明らかになった。 観測されたH-X分子間部分構造因子の最小二乗法解析から求めた最近接水分子間水素結合距離r(O-H)=1.91(1)Åは、純水について報告されている値と良く一致している。一方、最近接分子間O-H配位数は0.83(1)であり、純水について報告されている値に比較すると半分以下である事が初めて明らかになった。今回得られた結果は、尿素分子が有するタンパク質変性作用に関する分子レベルの機構解明にとり重要な知見となるものと考えられる。
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