2009 Fiscal Year Annual Research Report
水からの可視光誘起酸素発生能を有する分子素子の設計と開発
Project/Area Number |
20550058
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
八木 政行 Niigata University, 自然科学系, 教授 (00282971)
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Keywords | ルテニウム錯体 / 水の酸化触媒 / 酸素発生 / 人工光合成 |
Research Abstract |
エネルギー・環境問題を背景に、次世代のクリーンなエネルギー供給システムとして人工光合成への期待が高まっている。人工光合成の構築において、水からの可視光誘起酸素発生能を有する分子素子の開発が重要である。当研究室ではこれまでに、単核ルテニウムアコ錯体が水の酸化触媒として高い活性を示すことを見出した。本研究では、単核ルテニウムアコ錯体が分子素子の水の酸化触媒部位として有効に機能するかを明らかにするために、カルボキシル基を導入した新規ルテニウムアコ錯体(1)を合成し、その酸化還元特性ならびに水の電気触媒化学的酸化活性を研究した。TiO_2ナノポーラス電極表面に1を吸着させた。1のTiO_2ナノポーラス表面への吸着挙動および1吸着TiO_2ナノポーラス電極(1/TiO_2)の水の酸化触媒活性を研究した。 1吸着TiO_2ナノポーラス(1/TiO_2)のCV(pH=5.3)では、0~1.0Vの範囲で0.7Vに1のRu^<II>/Ru^<III>に基づく応答が見られ、掃引速度の増大と共に酸化波のピーク電流値(I_<pa>)は増大した。I_<pa>と掃引速度の平方根が直線関係を示したことより、TiO_2ナノポーラス膜中での1の電荷輸送が拡散機構により進行することが示された。一般にカルボキシル基を有する機能分子がTiO_2ナノポーラス表面に化学的に強固に吸着することが示知られているため、膜中での1の物理的拡散は困難である。従って、膜中の電荷輸送は吸着1間の電荷ホッピング機構によると考えられる。0.2~1.8Vにおける1/TiO_2電極のCV(pH=1.1)では、0.9VにRu^<II>/Ru^<III>に基づく酸化還元応答が見られた他、1.3VにRu^<III>/Ru^<IV>と考えられる酸化還元応答が観察され、1.4V以上で水の酸化に基づくアノード電流の立ち上がりが観察された。1.8Vにおける電流値は、TiO_2電極と比べて約12倍高かった。これより、TiO_2表面に吸着した1が水の電気触媒化学的酸化活性を示すことが分かった。1/TiO_2電極を用いて1.7Vでの定電位電解を行ったところ、酸素発生量は、TiO_2電極を用いた場合と比べて約20倍多かった。これより1/TiO_2電極が水の酸化触媒として有効に働くことが示された。
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