Research Abstract |
前年度までに,油水界面でのタンパク質の電気化学的挙動に関する基礎的検討を終え,ある種のアニオン性界面活性剤を油相に高濃度添加すれば,pH3.5程度の水相中のタンパク質を,界面に吸着する電流を用いて検出できることを原理的に示した。また,実用的な応用のための基礎検討として,多孔質テフロンチューブを用いる油水界面型フローセルを二連で用い,一段目のフローセルで2種類のタンパク質(リゾチームおよびミオグロビン)を吸着電位の違いを利用して分離し,二段目で検出することを試みた。その結果,二種類のタンパク質を同時定量できることが示された。そして,以上の成果をLangmuir誌に報告した。このような基礎的検討を踏まえ,本年度(最終年度)において,実際的応用のモデル実験として,人工尿中のタンパク質の分析を試みた。尿中のタンパク質は主としてアルブミンであることから,一つの油水界面型フローセルを用いて測定を行ったところ,人工尿中に含まれる低分子イオン(クレアチニンなど)がアルブミンと同様の大きな電流応答を示すことが分かった。そこで,透析膜を用いて試料溶液中の低分子イオンを予め除去したところ,タンパク質のみによると思われる電流応答を得ることができた。標準添加法により人工尿中のアルブミン濃度を求めたところ,他の含有タンパク質の影響のため表示値より一桁高い値(3.0μM)となったが,尿タンパク陽性の患者のアルブミン濃度は十分高くなるため,臨床的応用の可能性は高いと思われる。なお,本研究と密接に関連する研究として,生体膜において重要な役割りを担っている膜結合酵素(フルクトースデヒドロゲナーゼ)および酸化還元タンパク質(シトクロームc)の油水界面での電子移動反応の研究を行い,その成果を学会発表(計4件)している。
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