Research Abstract |
本研究は,金属サレン錯体と有機ハロゲン化物との触媒的酸化還元反応を利用した,有機ハロゲン化物の高感度検出法の開発を最終目的とする。最終目標に達するまでの基礎的研究として,1)金属サレン錯体と有機ハロゲン化物との反応のスクリーニング2)金属サレン錯体の電気化学的酸化還元挙動の解析3)金属サレン錯体と有機ハロゲン化物と反応解析4)金属サレン錯体の改良(合成),同定を行う。平成22年度は,様々なサレン誘導体を配位子とする鉄,コバルトおよびニッケル錯体と有機ハロゲン化物との反応のスクリーニング,金属サレン錯体の電気化学的酸化還元挙動の解析,金属サレン錯体と有機ハロゲン化物と反応解析,脱ハロゲン化反応に及ぼす光照射および有機溶媒の効果などの基礎的研究を行った。それぞれの金属錯体の電気化学的酸化還元挙動について詳細に調べた結果,中心金属がニッケルの場合でも,鉄やコバルトと同様に酸化還元電位の順序は,配位子の置換基によって決まることが分かった。特に,ニッケルの場合は,容易に電極に吸着するため,それを修飾電極として有機ハロゲン化物のセンサーとして用いられることが可能であることが示唆された。また,コバルトーサレン錯体の,電気化学的酸化還元解析の結果,+IIから+Iの還元は通常の1電子還元であるが,+IIから+IIIへの酸化は,二量体の形成を伴っていることが,様々な電気化学的測定法によって明らかになった。
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