2009 Fiscal Year Annual Research Report
水素ラジカルによる特異な分解反応の基礎研究とタンパク質化学への応用
Project/Area Number |
20550081
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
高山 光男 Yokohama City University, 生命ナノシステム科学研究科, 教授 (10328635)
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Keywords | 水素ラジカル / 質量分析 / 還元反応 / 抗酸化 / 超音波 |
Research Abstract |
本研究課題は、水素ラジカルを利用した新規な化学反応の探索とその応用を目指すものである。水素ラジカルの発生には、1.水溶液中での超音波と抗酸化・環元性試薬との組み合わせ、2.紫外レーザーと抗酸化・還元性試薬の組み合わせを用い、平成21年度の研究計画に対して下記の成果を得た。 1.現在1ccの水溶液試料を用いている超音波実験系の小型ヒを目指した。超音波キャビテーションおよび加熱の効果により、反応条件も制御が困難となり、むしろ現行法が優れている結果となった。 2.前年度、抗酸化・還元性試薬としてチオールベンゼンが優れていることを見出したことから、超音波との組み合わせを、質量3500~4000Daのペプチドのグルカゴンおよびスルホン酸化ペプチドCCK-33に適用したところ、いずれもアミノ酸配列解析が可能な分解反応が確認された。グルカゴンでは、C-末端側のヘリックス部分の分解が抑制された。 3.超音波による加水分解機構の解明では、抗酸化・還元性試薬を添加剤とすることで副次反応が抑制制御されるため、その素過程として水素ラジカル放出が重要な反応因子であることを推定した。この仮説は、水素ラジカル発生剤(ヒドロキシフタルイミド)を添加剤として、同様の反応が観測されたことから支持されたが、まだ機構解明には不明な点も残された。 4.超音波による反応生成物の評価システムとして利用しているレーザー脱離イオン化質量分析を用い、紫外レーザー光照射と抗酸化・還元性試薬の組み合わせでは、新規の水素ラジカル発生試薬を発見することができた。基礎的知見として、ペプチドのジスルフィド結合(S-S)を切断し還元反応(SH HS)を誘起する性質を有することが判明した。本知見は、別研究プロジェクトの応用研究に役立つことから、論文発表と同時に特許申請を行った。 以上、21年度は水素ラジカルを利用する反応および発生反応試薬に関する基礎研究面での大きな成が得られた。
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