2010 Fiscal Year Annual Research Report
水素ラジカルによる特異な分解反応の基礎研究とタンパク質化学への応用
Project/Area Number |
20550081
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
高山 光男 横浜市立大学, 生命ナノシステム科学研究科, 教授 (10328635)
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Keywords | 水素ラジカル / 質量分析 / タンパク質 / 分解 |
Research Abstract |
本研究課題は、水素ラシカルの有する高い反応性を利用する分解反応を見いだし、その基礎過程の解明およびタンパク質分析への応用を目的とする。平成22年度の研究実施計画は、1.超音波により発生する水素ラジカルを利用するペプチドの加水分解反応の機構解明、2.レーザー光照射による水素ラジカル発生系の物性探索であり、下記の成果を得た。 1.ペプチド水溶液に超音波を照射する際、ペプチド結合の加水分解反応を起こすには、水分子を水素ラジカルH・とヒドロキシラジカルHO・に解離させる超音波照射条件に設定する必要のあることが判明した。すなわち、超音波ホーンの先端表面からある特定の特性を有するキャビテーションを発生させる必要があった。但し、キャビテーションの特性を解明するには至らなかった。 2.水分子のラジカル解離から生じるHO・の酸化能力は極めて高く、ペプチド中の芳香属アミノ酸を優先的に水酸化体に変換し、多数の水酸基を付与することが判明した。このペプチドの水酸化反応は、過剰のフェニル基試料を導入することで抑制され、さらに水素ラジカル供与体としてジヒドロキシベンゼンを添加することで、完全に抑制された。 3.ペプチド主鎖の加水分解の機構に関して、酸加水分解機構と水分子のラジカル解離機構とを考慮した、水素ラジカルがペプチド主鎖のカルボニル酸素を攻撃するモデルを構築できたので、現在、論文投稿準備中である。 4.レーザー光照射による水素ラジカル発生試薬の物性を探索中、各種ペプチドの水溶液をエレクトロスプレー法でイオン化し、真空中で電子線を照射して水素ラジカルを発生する反応系を見いだし、論文として報告することができた。その際、水素原子源はペプチドに結合したプロトンであり、その際、ペプチドには複数の塩基性部位が必要で、複数のプロトンが付加していることが必要であることが判明した。 以上、水素ラジカルの発生源として、水分子のラジカル解離、フェノール性水酸基のラジカル解離、さらにペプチドに結合したプロトンがあり、いずれもペプチド主鎖の分解反応に寄与し、アミノ酸配列解析への応用できることがわかった。
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