2010 Fiscal Year Annual Research Report
環境応答型高分子の創製と貴金属イオン抽出システムの構築
Project/Area Number |
20550089
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Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
茶山 健二 甲南大学, 理工学部, 教授 (10188493)
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Keywords | 貴金属イオン / チオエーテル誘導体 / 温度感応性高分子 / 銀(I)イオン / 下限臨界共溶温度 / 溶媒抽出 |
Research Abstract |
本研究では、溶媒抽出の際に使用される有機溶媒が大きな環境負荷を持つことに着目し、有機溶媒を用いず温度感応性高分子を用いて貴金属イオンの溶媒抽出を行うため、貴金属イオンを選択的に抽出するモノアザテトラチオエーテル誘導体を高分子鎖内に誘導した新規温度感応性高分子を創製することを目的としている。本年度の研究では、1個の窒素原子と2個の硫黄原子を持つ抽出ユニットATUおよび1個の窒素原子及び4個の硫黄原子を持つATHを誘導した温度感応性高分子を合成し、それぞれの物性と貴金属イオンの抽出挙動を比較した。その結果、ATH共重合体の方がより高い貴金属捕集能を有することが明らかとなったが、多座配位子の強い結合故に、一度抽出した貴金属を高分子鎖より脱離することが困難であるというデメリットも明らかとなった。そこで、ATH同様に貴金属イオンの選択的抽出が可能なATU共重合体を用いて、貴金属イオンの中でも銀イオンの捕集及び脱離に関する挙動を検討した。種々の重合比を持つATU共重合体を合成し、捕集挙動及び脱離挙動を検討した結果、銀イオンはATUユニットにより選択的に水溶液中より高分子鎖中に捕集され、固相中に取り込まれた。この固相を低い温度で溶解し、酸性水溶液中に銀イオンを逆抽出することが可能であった。これらの脱離プロセスは酸の他にチオ尿素等の配位子が共存する水溶液中でも試みられ、一定の成果が明らかとなった。当初より、貴金属イオンを有害な有機溶媒を使用することなく抽出し、さらにそこから貴金属イオンを脱離することを目標としてきたが、この抽出と脱離の両方を可能にするシステムを開発できたことがこの研究で明らかとなった。
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