2008 Fiscal Year Annual Research Report
低毒性スズ反応剤の設計と創製に基づく環境調和型有機合成法の開発
Project/Area Number |
20550092
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
三浦 勝清 Saitama University, 理工学研究科, 教授 (20251035)
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Keywords | 有機スズ反応剤 / ラジカル反応 / 触媒反応 / ヒドロスタンナン / 環境調合型合成 / 還元反応 |
Research Abstract |
本研究では、毒性および環境毒性が低い新規有機スズ反応剤を設計、創製し、これをラジカル反応や遷移金属触媒反応に利用することで、環境負荷の少ない精密有機合成法を開発することを目標としている。スズ上に分解しやすい有機基を導入したり、スズ上の有機基を減らしたりすることでスズ反応剤の毒性の低減を図るとともに、既知の合成反応に利用して、副生する有機スズ化合物の無毒化と生成物の分離精製の簡略化を目指した。今年度はベンジル基を有するヒドロスタンナン類の合成とラジカル反応への利用について検討した。塩化ベンジルと金属スズとの反応によりジベンジルジクロロスタンナンを合成し、これに塩化ベンジルマグネシウムを作用させることでトリベンジルクロロスタンナンを得た。続いて水素化リチウムアルミニウムを反応させることでトリベンジルヒドロスタンナンを合成した。これを用いてハロゲン化アルキルのラジカル還元反応やハロアルケンのラジカル環化反応を行ったところ、反応が進行して目的生成物を与えた。反応混合物をフッ化物イオンや酸で処理して有機スズ化合物の分解を試みたが、完全に分解するまでには至らず、今後、処理条件の最適化を図っていく必要がある。また、トリベンジルヒドロスタンナンによるアルケンのラジカル的ヒドロスタンニル化を試みたが効率よく目的生成物を得ることはできなかった。ヒドロスタンニル化はスズ上にハロゲンのような電気陰性基を導入することで加速できると考えられ、ジベンジルクロロヒドロスタンナンのような新たなヒドロスタンナン類の開発が必要であることがわかった。
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