2010 Fiscal Year Annual Research Report
低毒性スズ反応剤の設計と創製に基づく環境調和型有機合成法の開発
Project/Area Number |
20550092
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
三浦 勝清 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (20251035)
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Keywords | 有機スズ反応剤 / ラジカル反応 / ハロアルカン / ヒドロスタンナン / 環境調和型合成 / 還元反応 / ヒドロスタンニル化 |
Research Abstract |
本研究では、新規有機スズ反応剤の創製と利用について研究し、反応後にスズ残渣を容易に分離回収、あるいは、分解・無機化できる有機スズ反応剤の開発を目指している。22年度は、トリベンジルヒドロスタンナン(Bn_3SnH)を利用するチオ炭酸エステル類のラジカル還元、ハロアルカンと電子不足アルケンの分子間ラジカル付加反応、アルケンやアルキンのヒドロスタンニル化反応、これによって生成するアルキルスタンナンやビニルスタンナンの反応について検討を行った。チオ炭酸エステル類のラジカル還元では、第一級および第二級アルコールから誘導した基質の還元について検討した結果、後者の基質が高い反応性を示すことがわかった。特に、ジフェニルメタノールから誘導した基質は、効率よくジフェニルメタンに還元することができた。しかし、反応により生じるスズ残渣の分離は容易ではなかった。分子間ラジカル付加反応では、目的とする付加体が得られ、濾過によりスズ残渣を除くことができたが、ハロアルカンの単純還元体が生成するため、付加体の収率は低いものだった。Bn_3SnHの水素供与能が、よく利用されるBu_3SnHに比べて高いために、単純還元が起こりやすくなっていると考えられる。Bn_3SnHのアルケンへの付加反応は、ラジカル開始剤では難しく、パラジウム触媒の利用が効果的であることがわかった。生成したアルキルスタンナンは反応性が低く、酸化条件においても、炭素-スズ結合の酸化的切断は進行しなかった。アルキンへの付加反応は、ラジカル開始剤により促進され、ヒドロキシ基が存在しても効率よく進行した。生成したビニルスタンナンは、プロトン化分解やハロゲン化分解を起こすことがわかった。他にも、ジベンジルクロロヒドロスタンナン(Bn_2SnClH)の調製と反応、フェニルおよびアリル-トリベンジルスタンナンの反応についても検討を行ったが、目的とする反応は効率的には進行しなかった。
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Research Products
(1 results)